【対談】山本強×中村裕昭

他人任せではいけない、住宅地盤への意識を
東京圏にまで液状化被害をもたらした東日本大震災を境に、住宅地盤への関心が高まっている。
建築主や工務店がいま認識すべきことは何か――。この分野に新しいビジネスモデルを持ち込む地盤ネット代表取締役の山本強氏と、地盤の専門家である一般社団法人地盤安心住宅整備支援機構技術顧問の中村裕昭氏が語り合った。

住宅地盤の情報は専門外の人になかなか届きません。

中村昔はだれもが生まれ育った場所で暮らしてきました。どこが危険でどこが安全かという情報は、その地域の中で長年継承されてきました。ところが、いまは多くの人が仕事上の都合を含めて利便性の観点から新しい土地を求めて移り住む時代です。「地盤のことをだれに相談すれば良いか」と尋ねられるほど、どこで情報が得られるのかが分かりにくくなっています。

背景には、2つの事情があります。一つは、地盤情報がネガティブな場合、土地の価格にマイナスに働き得ることから、財産に関する個人情報として秘匿されてきたという点です。もう一つ、よしあしが分かりにくい造成地や埋立地などの人工地盤は、悪いはずがないという根拠のない安全神話によって、情報が公にされなくても通用してしまっているという点です。

山本情報はあるということですね。地盤ネットを立ち上げるまでの約10年間、地盤補償会社に勤務し、住宅地盤の現場を数多く見てきた経験からも、住宅地盤の情報は確かに蓄積されていると思います。

しかし、どの地盤が良くて、どの地盤が悪いか。そして、どうすれば地盤を良くすることができるか、という情報を、地盤調査を担う会社が公開するようなことはありません。公益の視点から本来は社会に還元されてしかるべき情報だと思いますが、これらの会社が公開するメリットを感じないからでしょうか、情報が秘匿されたままというケースが多いようです。

住宅地盤の情報を取り巻く環境は改善しますか。

中村先ほど申し上げた情報の得にくい状況は改善される兆しを見せていると思います。専門家と建築主・工務店との間の壁は取り払われるようになるでしょう。

住宅地盤の事故を見ると、実は改良工事(地盤対策工事)を実施した敷地でのケースが少なくないことから、住宅地盤での調査や改良工事の適切さを疑問視する声も上がるようになっています。明確な判断を下し難い場合に一律に安全側に傾いた改良工事を推奨するような業界の姿勢は、本来の姿に戻す必要があると思います。独立性のある主体が地盤調査を事業として担う形に改め、改良工事会社が工事受注目的で調査も手掛けるような利益相反は止めるべきです。

山本その通りだと思います。改良工事欲しさに地盤調査も手掛けるような姿勢があり、はっきり申し上げて住宅業界では地盤会社の信頼度は低いのが実情です。

ただ、それは歴史が浅く、過渡期にあるがゆえの姿ではないかと思います。住宅地盤の調査を義務付けたのは2000年4月施行の住宅品質確保促進法ですから、住宅地盤の業界はまだ十数年しか歴史がない未成熟の段階と言えます。最近では値下げ競争の激化で改良工事の収益率が下がっているので、地盤ネットが築き上げたような地盤調査や地盤補償で収益を確保できる健全なビジネスモデルが浸透すれば、あるべき姿に戻ると信じています。

建築主や工務店は家づくりにどう臨めばいいですか。

中村地盤の話は医療に例えることができます。患者に病名を告知し、リスクを患者と共有できれば、治療方針が定まります。それと同じように、地盤調査の結果に基づくリスクを建築主や工務店と地盤のプロとの間で共有できれば、必要に応じて適切な対策を講じることが可能です。リスクを知らされていなかったとしても、それは必ずしもリスクがないことを意味するものではありません。リスクがないかどうかを、地盤のプロに強く問うことが重要です。地盤リスクに対する意識を高め、適切なリスク評価を求める声をまず発していくことで状況は開けていくはずです。

山本私も、家づくりに携わる関係者間のリスクコミュニケーションが必要だと思います。東日本大震災によって、地盤に関する知識の有無は人命を左右しかねないという現実が突き付けられました。それほど重要なことです。ノーリスクはあり得ないという前提に立ち、家づくりに携わる関係者がどの程度のリスクが存在するのかという情報を、まず共有する必要があります。

そのうえで、地盤補償まで含めたリスクマネジメントに取り組むことが不可欠です。人命に関わってくることですから、他人任せの姿勢では万が一のときに悔やんでも悔やみきれません。建築主にしても工務店にしても、自ら理解しようという姿勢が必須なんです。

「地盤ネット」って、どんな会社?

地盤ネットは、地盤調査結果の再解析サービスや地盤補償業務を手掛けている地盤解析専門会社で、2012年12月に東証マザーズに上場した。他社で実施した地盤調査の結果や地盤対策工事提案の妥当性を検証し、リスクの見落としやコストの無駄を指摘するのが、同社の地盤セカンドオピニオン®サービスである。地盤補償業務では、最高20年間・5,000万円まで補償するといった仕組みを構築している。

これらを中心に4つの「見える化」として一貫して運営管理するのが、地盤安心住宅®システムだ。調査結果、解析基準、地盤改良工事現場、補償内容という4つの過程をすべて見える化し、建築主の不利益を解消して安心を提供する。改良工事からの独立性を保った同社だからこそ構築できた地盤会社の新しいビジネスモデルと言える。

地盤業界の仕組みと、当社事業の特徴について
「地盤安心住宅®システム」で4つの過程を 「見える化」

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