【Chapter8】それでも「不安」は残る

日ごろ健康に気を使っていても、インフルエンザの大流行には勝てないかもしれません。同様に、大震災などを想定すれば、地盤の「不安」をゼロにできないことはお分かりいただけると思います。

防ぎきれない大規模災害、そこからも生まれるトラブルもあります

  • 右の写真は、東日本大震災時の被災例です。千葉県浦安市の埋立地に建つ戸建て住宅が、液状化による地盤沈下に見舞われました。もともと埋立地ですから、液状化のリスクが高いと考えられる場所です。しかし、建築主には、その点が認識されていなかったのかもしれません。

    埋立地や干拓地に土を盛って住宅地に変えたような人工造成地盤は、自然に形成されたものと比較して健康状態を見極めにくいのが普通です。この場所には実際に、液状化という病気のリスクが潜んでいました。大地震によって、それが顕在化したわけです。

  • 盛土造成地では滑動崩落

    大地震によって顕在化するリスクは、液状化だけではありません。東日本大震災では右の写真のように、盛土造成地での滑動崩落が大きな被害をもたらしました。擁壁が崩れ、写真手前に土砂が流れ出している様子が見て取れます。

    この場所は斜面地に土を盛って造成した住宅地で、やはり人工造成地盤です。造成地はひと目見ただけでは、土をどのように切り盛りして開発されたのかという点までは分からないのが実情です。どのような病気のリスクが潜んでいるのかを、慎重な診察で見極めることが必要です。

MEDICAL RECORD

いくら万全の対応を取ったつもりでも、落とし穴はあるものです。例えば液状化や盛土の滑動崩落は、個別の敷地単位で通常の地盤調査を実施しても、その発生を予測するのは困難になります。もしかすると病気にかかるのではないか――その不安をゼロにするのは、極めて難しいことなのです。

もっとも、ゼロに近付けようと努力することはできそうです。例えば、大地震によってどのような不具合が起こり得るのか、それにはどのような対策が有効なのか、新しい動きに常に目を向けておく必要があります。国も、東日本大震災での液状化や盛土の滑動崩落の発生を受け、リスクの見極めに役立つ情報の提供に力を入れ始めています。

何よりも過去の災害事例に学ぶ姿勢が求められます。対策を講じた地盤上で、大地震時に建物にどのような影響が現れるのか、あるいは現れないのか。それが対策の効果の有無を示すからです。今後に向け、有用な情報をもたらす機会にもなるはずです。

工務店などとの間で、これら地盤関連の情報を共有し、リスクの程度と、それに対応するための費用の大小を天びんにかける必要があります。建築主として適切な対応を取るために欠かせない取り組みです。

Chapter2でも触れたように、専門家に頼る以前の予防の視点も失わずにいたいものです。「地形は 地下を映す鏡」と言われます。まず地形をよく見るのが地盤の様子を知るための第一歩です。

例えば、液状化は、海岸・河川沿いなど地下水位の浅い低地の砂質地盤でよく発生します。沿岸部の埋立地や過去に池・沼だった場所はリスクが高いとみることができます(右の図)。

しかし、こうした条件に当てはまらなければ液状化しにくいとは必ずしも言えないので注意が必要です。砂質でなく礫質や細粒の地盤でも、液状化は起こり得ます。液状化のリスクを見抜くには、こうした地形区分に加えて、①自治体のハザードマップでどのように評価されているか ②近隣でかつて液状化が発生した履歴があるか ③地盤柱状図など地盤に関する公開データは何を示しているか――などを参考に総合的に判断します。

こうした自ら入手できる情報に目を通す努力をしてから専門家に相談すれば、理解や納得の度合いも高まるはずです。

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