【Chapter7】健康を損ねたら治療する

万が一、健康を損なった場合には、本格的な治療として、工事で建物の傾きを修正します。
そのための費用は、瑕疵責任の問われる専門家向けの保険などで賄うことができます。

地盤の健康を取り戻すための主な治療方法

  • 1.アンダーピニング工法

    アンダーピニング工法イメージ

    基礎下に鋼管を挿入し、支持層まで到達させたら、その反力を利用し、建物を基礎ごとジャッキアップしていく工法です。作業空間を確保するため、隣地間隔が1mほど必要になります。適切な施工なら再沈下のおそれはないと言われますが、施工に1カ月半程度要することもあります。

  • 2.耐圧板工法

    耐圧板工法イメージ

    基礎の下を掘削し、表層を砂袋や固化材で安定させてから鋼製の耐圧板を敷設します。そこにジャッキを挿入し、建物 を基礎ごと持ち上げる工法です。作業空間として、隣地との間隔が1mほど必要になります。深い層まで軟弱な場合には、再沈下のおそれがあります。工期は2~3週間程度です。

  • 3.グラウト注入工法

    グラウト注入工法イメージ

    べた基礎の底に穴を開け、そこから地中にセメント系薬液を注入し、その量と圧力で基礎を押し上げる工法です。薬 液は支持層にまで達しなくても基礎を押し上げることができますが、押し上げ可能な高さ、つまり沈下修正量は不同沈下で数cm程度と言われます。工期は1~2週間程度です。

  • 4.硬質ウレタン注入工法

    硬質ウレタン注入工法イメージ

    グラウト注入工法と同じように、べた基礎の底に穴を開け、そこから地中に硬質ウレタン樹脂の原液を注入し、その発 泡圧力で基礎を押し上げる工法です。この工法もグラウト注入工法と同じように、沈下修正量は不同沈下で数cm程度と言われます。工期は1~2週間程度です。

  • 5.プッシュアップ工法

    建物の土台と基礎を固定するアンカーボルトと呼ばれる金物をいったん切断し、ジャッキで建物を土台から持ち上げたうえで無収縮モルタルを間に詰め、再び土台と基礎をアンカーボルトで固定する工法です。沈下修正量は数cm程度が限界で、再沈下のおそれが残ります。工期は2~3週間程度です。

    プッシュアップ工法イメージ

「保険」があるのも医療と同じです

地盤のリスクはゼロにはなりません。万が一の事態は想定を超えて起こり得るものです。そのため、「リスクを移す」という考え方が取られます。

これは簡単に言えば、保険への加入です。保険料を支払って保険に加入する代わりに、リスクを保険会社に移すわけです。万が一リスクが顕在化し、例えば地盤沈下が起これば、その修正工事に掛かる費用に保険金を充てます。瑕疵責任の問われる地盤会社や工務店向けの瑕疵担保責任保険が代表例です。そこでは免責になる地震後の復旧工事には、地震保険を利用できます。

東日本大震災以降に認識が広がった点の一つは、液状化による沈下の修正工事でトラブルが発生するという点です。
グラウト注入工法で薬液を流し込み過ぎた結果、隣家の基礎下にまで薬液が流入し、地盤を隆起させる被害を与えてしまったケースがあります。また、耐圧板工法で沈下を修正したものの、その後、再沈下を起こしてしまい、再修正のために多額の工事費用が掛かってしまったケースもあります。こうしたトラブルを避けるためには、コストだけに目を奪われることなく、信頼できる工事会社に、地盤、基礎形状、沈下量などに応じた適切な工法を選んでもらったうえで、実際の工事には可能な範囲で立ち会うことも大切です。

もう一つ、液状化による沈下の修正工事に併せて液状化対策工事を実施しようとすると膨大な工事費用が掛かるという点も、改めて認識されるようになりました。しかも、修正工事では支援金や補助金を利用できますが、対策工事では利用できません。補助金制度はあるものの、対象はあくまで自治体が道路部分で実施する対策工事で、個人宅地での利用は想定されていません。

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