【Chapter6】まずは発症を未然に防ぐ

健康状態に不安があると分かったときに、問題が現れないようにする予防的な治療に相当するのが地盤対策工事です。ただし、絶対の決め手にはならないことは知っておきましょう。

  • 表層改良工法

    深さ2m程度までの表土にセメント系の固化材を混ぜ合わせ、地盤を強化する工法です。平面的に地盤全体に対して適用する必要があるので、隣地にまで固化材の影響が及ぶことが懸念される狭い敷地や建物密集地には向きません。改良体の下部、つまり固化材を混ぜ合わせる層の下は地盤が強く、沈下するおそれがないことが前提です。固化材を用いるという点で柱状改良と同種の工法です。
    こうしたセメント系の固化材を使う地盤対策工事では、地盤条件や固化材の種類を十分に検討しないと、土壌汚染対策法などで特定有害物質と定められている六価クロムを溶出するおそれがあります。

    表層改良工法イメージ

  • 柱状改良工法

    地盤の支持層までの間に、土をセメント系の固化材で固めた柱状の改良体を築いていく工法です。専用の機械で地盤に直径60cm前後の穴を開け、掘り返した土に固化材を混ぜ合わせながら掘り進め、改良体をつくります。地盤改良では代表的な工法です。ただし、改良体の長さは径の10倍程度までが一般的であることから、支持層の深さが8m程度までなら採用できますが、それ以上に深くなると改良体の長さと径のバランスから採用には不向きと言えます。施工上は、この柱状改良体の品質確保に注意する必要があります。まず、改良体の品質は、掘り返した土と固化材の混合状況に左右されるので、その不良個所が生じないように対策を施します。具体的には、右の図に示す撹拌ヘッド部分にある「共回り防止翼」が所定の位置に固定されていること、上下の「撹拌翼」「掘削翼」の幅より突き出ていることが必要です。施工時には、これらの確認が重要になります。

    柱状改良工法イメージ

  • 小口径鋼管杭工法

    地盤の支持層までの間に、5~20cm程度の小口径の鋼管を打ち込む工法です。支持層の深さが30m程度と、一定の深さがあっても採用可能な工法です。何より、鋼管を支持層にまで到達させるのが重要です。途中に転石のような障害物が混入している地盤など、その性状によっては、施工が困難で採用に向かない地盤があります。施工中、近隣とのトラブルを招かないためにも、無振動・無騒音の工法を採用することが基本になりつつあります。現在の主流は、回転ねじり込み工法や回転圧入工法です。

    小口径鋼管杭工法イメージ

予防治療の失敗も起こり得ます

柱状改良工法を採用した場合、腐植土層で固化不良が生じ、改良部で必要な品質を確保できない事態が起こり得ます(上の図)。腐植土層の存在は施工中に分かるので、しっかりした施工管理が不可欠です。また、小口径鋼管杭工法の場合、地盤調査後に土を盛ったために鋼管杭の長さがその分足りなくなり、支持層にまで届かない事態が起こり得ます(下の図)。これらは、調査前を含む工程全体を見渡せる監理者がいれば防ぐことができます。

対策工事を実施しても、地盤のトラブルは起こることがあります。
施工会社に任せきりにはせずに、建築主も自ら現場に足を運び、きちんとした施工管理が行われていることを確認しましょう。

トラブル防止の専門家の養成も進んでいます

地盤対策工事を実施した後に不同沈下が発生した事例では、対策工事の設計・施工に原因があると考えられる例が少なくありません。対策工事の一般的な工法である柱状改良と小口径鋼管杭で見ることのできる左の2つのケースは、そうしたトラブルの代表例です。「地盤インスペクター®」は、こうしたトラブルの防止を図ろうと一般社団法人地盤安心住宅整備支援機構が養成に乗り出している検査技術者の職能です。

この仕組みによって生まれる認定登録者の役割は、地盤対策工事が適正に施工されているかを検査するために、住宅地盤に関する基礎知識を持つ第三者として工務店の依頼を受けて対策工事の現場に立ち会うことです。施工管理とは異なった立場から、施工方法と品質の客観的な検査を行い、対策工事の施工のレベルを上げていくことを主な目的とします。対策工事の品質を高め、沈下事故を防ぐ仕組みとして期待されています。

※「インスペクター」=「検査員」を意味する言葉です。

地盤インスペクター®による検査が完了すると検査済証が発行される。
右は認定登録証の見本

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